ある静かな温泉宿で惨劇が起きた。
トイレで宿泊客女性の惨殺死体が見つかったのだ。
女性の死体は、鋭利な小さい刃物でめった刺しにされていたり、
えぐり取られていたりとひどい有様だった。
そのうえ、トイレには鍵がかかっており、
この密室殺人に警察も急いで対応した。
この事件を聞いて震え上がった男が一人いた。犯人ではない。
その男はこのトイレに小型のビデオカメラを設置して、隠し撮りを行っていたのである。
このまま捜査が進めば自分が設置したビデオカメラが
発見されて自分も捕まってしまうだろう。もしかしたら
殺人の容疑もかかってしまうかもしれない。思いつめた彼は警察に自首し、
すべてを話した。盗撮に使ったビデオカメラは発見された。
この盗撮男の行動は犯罪であるが、
事件の捜査には重要な手がかりになった。このトイレを盗撮したビデオテープには、
被害者女性も写っているはずである。必然的に犯人も写っているはずで、
どのような状況でこの殺人が行われたかを知ることができるのだ。
さっそくビデオデッキにテープを入れて検証が始まった。思ったとおり、
被害者女性は写っており、用を足すシーンがテレビに映し出された。
そして女性が用を足し終えて立ち上がった瞬間に、
トイレの窓から小さいシルエットが入ってきた。
なんとそれは小さな老婆であった。
手には針のようなものを持っている。その老婆はものすごいスピードで
女性の体をめった刺しにして、肉をえぐり取った。あまりの状況に
ビデオの前であっけにとられる捜査員。倒れて動かなくなった女性の横で、
老婆はものすごい形相でこちらを―つまりカメラのほうを睨んでこう言った。
「次はおまえの番だよ」
そして、捜査員のいる部屋の天井がゴトリと音を立てた。
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